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アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとは違うのですか?

アトピー性皮膚炎は、症状からも名付けられた病名です。
食物アレルギーは、原因から名付けられた病名です。
この2つの病名は、一人の人の病像を、違った角度から表現したものです。

アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の特徴から、名付けられた病名です。
「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。

すなわち、
1・繰り返し傾向のある
2・掻痒感が強い
3・アトピー体質のある
4・湿疹病変
といえます。

アトピー性皮膚炎の原因として、

1・皮膚の脆弱性
2・免疫の異常
3・精神的ストレス

が考えられ、これらの原因が組み合わさって発症します。
何がアトピー性皮膚炎の主な原因なのかは、その人によって異なります。
一般的に、乳幼児期のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーが関係している事が多く、食事面からの診断・治療が有効な事が多いようです。

食物除去・食物負荷試験に基づく診断では、乳幼児期のアトピー性皮膚炎の60〜80%に、食物アレルギーが関係しているという報告もあります。
しかし、アトピー性皮膚炎のすべての子どもに、食物アレルギーが関係している訳ではありません。
アトピー性皮膚炎の皮膚の状態が悪いからといって、その人の免疫異常の程度が、重症だといえない事もあります。
皮膚の状態だけから、免疫異常の程度を類推すると、誤りを侵しかねない事を、知っておく必要があります。
アトピー性皮膚炎の治療は、はじめに、スキンケアや外用療法などを中心に考えるべきでしょう。

一方、食物アレルギーは、全身の免疫異常を引き起こす原因の種類から、名付けられた病名です。
食物アレルギーの症状の一つとして、皮膚にアトピー性皮膚炎が起きる事があります。
食物アレルギーが原因で、アトピー性皮膚炎が起きている場合には、スキンケアに加えて食事療法を実施する事が、治療を行う上で必要になります。
しかし、食物アレルギーの症状として、アトピー性皮膚炎よりも、むしろ食物アナフィラキシーを起こす場合が深刻です。

食物アナフィラキシーを起こす子どもは、普段は皮膚には症状が現れていない場合があります。
そのために、「皮膚の症状は改善されているのに、何故、徹底した除去食療法が必要なのか」といった声が聞かれる事もあります。
周囲の大人が、食物アナフィラキシーなどの重症タイプの食物アレルギーを理解できず、誤った対応をする事も少なくありません。
重症タイプの食物アレルギーの治療は、完全除去食療法を中心に考える必要があります。

木村 彰宏(いたやどクリニック 小児科部長)

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